京都には田中さんしか購入できない“田中Tシャツ”があるらしい

「このTシャツは名字が田中さんしか買えませんので、ご購入名義が田中さん以外の方はキャンセルとなります」

 

こんな説明で“田中さんしか買えない田中Tシャツ”をネット販売しているのは、京都限定のガイドツアーを主催している「ことぶら」。ここでは、田中さんしか参加できない「田中ツアー」を筆頭に数々のユニークな京都ツアーを実施し、テレビ番組などでも紹介され注目を集めています。

 

今回は「ことぶら」代表の田中英哉さんに“田中Tシャツ”の誕生秘話をインタビューしました。

田中さん限定ツアーをはじめ、京都でユニークなツアーを手がける「ことぶら」

―― 行先をルーレットで決めたり、本能寺の変を再現する30キロのスパルタウォーキングをしたり、一風変わった京都ツアーを提供する「ことぶら」を立ち上げたきっかけを教えてください。

 

私は生まれも育ちも京都なのですが、仕事で名古屋に住み、離れてみて初めて京都の良さに気がついたんですよね。そんなとき、たまたま前職の社内ベンチャーの募集があり、2011年に企画・運営したのが古都京都をぶらりと探訪する、略して「ことぶら」の始まりです。

 

京都といえば寺社仏閣のイメージが強いですが、「ことぶら」では楽しむ要素に重きを置いた京都限定ツアーを企画し、ツアーを通して人と人とが出会うコミュニティ作りに貢献したいと思いました。ツアーというより「ことぶら」という場所を提供する、という感じでしょうか。実際、ツアーのリピーター同士が仲良くなって、遊びに行ったりもしています。

 

ちなみに「ことぶら」は、社内で1年間運営した後に独立し、現在にいたります。これまで、ユニークな京都ツアーには、たくさんの方に参加いただきました。

 

―― ことぶらツアーの紹介や報告のブログからも、その楽しさが伝わってきますよね。その中でも“田中さんしか参加できない田中ツアー”はひときわユニークですが、どのようにしてこのツアーが生まれたのですか?

 

京都市民ガイドの田中さんと次のツアーの打ち合わせ中、何かユニークなことをしたいねという話になり、私も名前が田中だったことから「田中ツアーをしよう」と盛り上がりました。

 

京都は「元田中」という地名や駅名があるように、田中姓の発祥地のひとつともいわれているんですよ。

 

―― 開催した田中ツアーは、どんな内容ですか?

 

京都市左京区の出町柳駅をスタートし、周辺に多い田中〇〇町という田中を冠する場所を通りながら田中神社へ参拝。そして、食事が美味しいと評判の町家で夕食を味わいながら親睦を深める半日のツアーです。夕食時には京都クイズを行い、最優秀者は「田中チャンピオン」の称号が授けられます。

 

もちろん参加者は田中さんオンリー。旧姓や漢字違いもNGと限定させていただきました。しかし、実は私が演技指導をした田中さんではない参加者が1名いて、最後にその人を当てるというミステリーツアー的な要素もプラスしています。

 

―― 反響はいかがですか?

 

参加者はみな同じ田中という名前のおかげか、夕食時には親戚のように仲良くなり、ご好評をいただいています。今まで3回開催しましたが、テレビ番組でも紹介され、関東からも田中さんが参加してくださいました。

 

評判を得て「田中さんVS山本さん」と題し、錦市場などで田中さんと山本さんが食べ比べを競い合うツアーなども派生して行うことに。「田中さんVS佐藤さん」も実施しましたよ(笑)。

Tシャツを購入できるのは田中さんだけ!限定感を演出する滑稽さがウケた

―― 田中さん限定のツアーに加えて“田中さんしか買えないTシャツ”も販売されていますが、このTシャツが誕生したきっかけは?

 

「ことぶら」のサイト内のグッズ販売のページで、京都のディープなお寺ガイド『秘密の京都』という私の著書を掲載したのですが、その際にオリジナルのスマホケースとTシャツも制作しました。田中Tシャツは、その一環として1年半ほど前に作りましたね。

 

―― 田中Tシャツのデザインや色のこだわりを教えてください。

 

田中Tシャツはシャレのつもりだったんですよ。「見て笑ってもらえたら」という、まったくの思いつきだったので、考案時間も5分ほど……。デザインが本業ではないのに加え、こだわりもあまりなくて、本当に恐縮です。

 

色彩心理学によると「青は頼りになる」「白は清潔感を意味する」……というのは後づけで(笑)、単に青色が好きで採用しました。青と白は「ことぶら」ツアーで使う旗のイメージカラーでもありますしね。

 

―― 発端はシャレでも、インパクトのあるTシャツですよね。田中さん以外の申込者はキャンセルというのも斬新です。

 

ツアー参加者に笑ってもらうためのネタ程度の軽い気持ちで作ったので、田中さん限定ツアーのように、意外にも反響があって逆に驚いています。1人で2~3枚注文される方や、プレゼントでしょうか、他の住所へ送られる方もいらっしゃいますよ。

 

ツアーもそうですが、Tシャツも楽しさを重視したうえで限定感を演出し、差別化することが重要なのかもしれませんね。田中Tシャツの場合、対象を田中さんに絞ったことや、その滑稽さが良かったのかもしれません。

 

私にとっては、みなさんが笑ってくれることが一番うれしいので、結果オーライです!

限定することで独創性が育まれ、個性や魅力につながる

―― 田中Tシャツを活用して、実施してみたいツアーはありますか?

 

ぱっと思いつくのは、田中ツアーの進化系として、参加者みんなで田中Tシャツを着て京都の田中ゆかりの地を巡ることでしょうか。おそろいのTシャツによって、より連帯感が深まりそうですよね。

 

他には、地図上のチェックポイントを制限時間内で多く巡り獲得した合計得点を競う「ロゲイニング」というスポーツも良いかも。チェックポイントの通過証明に写真撮影をする「フォトロゲイニング」というのですが、参加者全員に田中Tシャツを着てもらい、たくさん写真を撮った人やおもしろい写真を撮った人を表彰するようなツアーも良いですね。

 

あとは、ツアーではありませんが、田中Tシャツを着て田中ゆかりの場所で自撮りした写真を上げる「田中専用SNS」を作っても賑わいそうです。

 

―― わくわくしますね!そんな発想豊かな田中さんから、これからTシャツを使った企画を考えている人にアドバイスをお願いします。

 

Tシャツもツアーも、目的や対象者を限定して考えることが大切だと思います。限定することで内容が狭められて窮屈に感じるかもしれませんが、その制限が逆にクリエイティブ、言い換えると独創性を育み、個性や魅力につながるのでないでしょうか。

 

私自身も今後は「ことぶら」だからできる、もっと限定したユニークなツアーを開催したいと思っています。

かっこよくなくてもいい。オリジナルTシャツは「楽しさ」も大きな強み

オリジナルTシャツというと、かっこいいデザインやおしゃれなデザインを考えがちですが、田中さんに田中Tシャツのことをインタビューして「滑稽が楽しい」という新たな価値観に目覚めた気がしました。

 

特に、イベントで着るおそろいTシャツでは、あえておもしろいデザインにすることで、連帯感だけでなく、楽しさがアップしてお祭り気分がさらに高ぶりそうです。

 

目的や対象者を限定して考えれば、よりクリエイティブなオリジナルTシャツが完成しそうですね。

 

田中さん、ありがとうございました。

 

Interviewer&Writer:児島奈美

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【取材協力】田中英哉さん

ことぶら代表

サラリーマン時代に、京都限定の観光ガイドツアー「ことぶら」を立ち上げ独立。田中さん限定ツアーなど、とびきりユニークな京都ツアーがテレビや新聞などメディアにも多数取り上げられ注目されている。また、人と人とが出会いコミュニティ作りに貢献することをライフワークに「ことぶら」に加えて、京都のアラフォー男性限定の「ことぶら結婚相談所」も主宰。上級心理カウンセラーや日本実務能力開発協会 認定コーチをはじめ、さまざまな資格を生かし、今後はコーチングやメンタルケアカウンセリングなどの分野へも進出し、京都を拠点に幅広く多くの人に役立つため日々奮闘中。