鉄人28号を塗り替えよう!協賛Tシャツ誕生秘話に迫る

兵庫県神戸市のJR新長田駅から徒歩約3分のところにある鉄人広場では、全長18mの巨大ロボットのモニュメントがそびえ立っています。このモニュメントは、新長田にゆかりのある神戸市出身の漫画家、故・横山光輝さんの代表作「鉄人28号」。震災復興と地域活性化のシンボルとして2009年10月に完成し、観光スポットや地元のランドマークとして今や海外にまで広く知られています。

 

子どもたちから往年のファンまで魅了し続ける鉄人28号は、2016年10月、原作漫画の色に近い鮮やかなコバルトブルーに塗り替えられました。このリペイントイベントで大活躍したのが、オリジナルの協賛Tシャツです。協賛Tシャツの誕生秘話や反響について、KOBE鉄人PROJECT事務局のプロデューサー・岡田誠司さんに話をうかがいました。

高額な塗り替え費用を支援してもらうため、協賛Tシャツの製作を決意

―― 鉄人28号の塗り替え、そのきっかけを教えてください。

 

鉄人28号の表面の塗料に傷みが目立ち始めたのがきっかけですね。子どもたちが蹴って当たったのであろうサッカーボールの跡がくっきりと付いていたりして(笑)。鉄人広場では、“琉球祭”をはじめ、さまざまなイベントがよく開催されるため、鉄人28号は非常に多くの人の目に触れます。そんな中で「そろそろ塗り替えよう」という機運が高まってきました。

 

―― 確かに、街のシンボルが傷んだりくすんでいたりすると寂しいですよね。

 

そうなんです。ただ、塗り替え費用は約650万円と高額でしたので、企業や団体、個人から支援を募ろうと考えました。そこで、寄付を集めるために協賛Tシャツを作ることを思い立ったのです。

 

―― 協賛のノベルティについては他にも候補が考えられると思うのですが、Tシャツにした理由は何だったのでしょうか?

 

欲しい人とそうでない人との差が激しいボールペンやキーホルダーなどに比べて、Tシャツは誰からでも好まれるベーシックなアイテムだからです。KOBE鉄人PROJECT事務局として年間40~50本のイベントを手掛けていますが、オリジナルTシャツはよく作っていて、実際に好評なんですよ。

 

そして、今回のリペイントについて、鉄人28号の版権を持つプロダクションへ伝えたところ、快く応援していただけることになり、本格的にオリジナルの協賛Tシャツ作りが始動しました。

意識したのはカッコよさ。プレミアム感がファンの心をくすぐる

―― 鉄人28号の協賛Tシャツを作るにあたって、特に意識したことは何ですか?

 

第一に、カッコよさですね。モニュメントは、以前はグレーがかった色でしたが、リペイントにあたって原作漫画に近いコバルトブルーが採用されました。そのため、Tシャツの色も、塗り替え後の鉄人28号をイメージさせるブルーに決定。2パターンをデザインし、限定2,000枚で販売しました。

 

―― シンプルで爽やかで、大人が着てもカッコいいデザインですね。ちなみに、いつ頃から、どのように販売したのですか?また、サイズ展開と料金も教えてください。

 

昨年の9月頃に告知をして、ネットとイベントで販売しました。“神戸マラソン”を筆頭に、神戸市が主催・共催するイベントにはほとんど出ましたね。サイズはS、M、L、XLの4展開で、税・送料込みで3,250円です。

 

―― 実際に反響はいかがでしたか?

 

30~50歳代をメインに、男女を問わず、ご購入いただきました。ネットでは全国から注文がありましたよ。限定品であることも、ファンの心をくすぐったようです。また、地元愛の強い人が多い街ですので、「協賛」という意味合いで購入してくださった方もたくさんいらっしゃいました。協賛Tシャツの購入を通じて、街への愛着がさらに深まったのであれば嬉しいですね。

 

―― これから協賛Tシャツを作りたいと考えている企業や団体にアドバイスがあればお願いします。

 

どんなにおしゃれな協賛Tシャツを作ったとしても、そもそも何をやっているのか、何のための協賛なのかを知ってもらわなければ売り切るのは難しいでしょう。そのためには、メディアへのPRが大きな鍵を握ります。今回の鉄人28号のリペイントは、地元・神戸新聞の夕刊の一面を飾りました。新聞やラジオといったメディアとうまく連携し、PRに力を入れるべきです。

鉄人28号を“起爆剤”に、長田の街の活性化を図る

「長田は阪神・淡路大震災で被災し、その後、街は作り直したけれど、残念ながら“賑わいの創成”には未だにいたっていないように思います」と語る岡田さん。だからこそ、「鉄人28号を“起爆剤”に、鉄人広場を有効活用して市外・県外から人を集めることで、長田の街の魅力を伝えることができたら」と考えています。その一環が、鉄人28号の協賛Tシャツだったのでしょう。

 

鉄人28号と長田の街が、岡田さんをはじめ、大勢の人々から愛されていることを実感するインタビューとなりました。

 

(C)光プロ/KOBE鉄人PROJECT 2017

 

Interviewer&Writer:児島奈美

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【取材協力】岡田誠司さん

KOBE鉄人PROJECT事務局 プロデューサー

神戸市長田区で生まれ育った元ミュージシャン。2006年にKOBE鉄人PROJECT事務局を立ち上げ、鉄人28号や三国志などを活かしたまちづくりに貢献する。「078kobe.jp」など多数のイベントにも参加し、神戸市とタイアップして「KOBerries」「シューファイター」などを発起。最近では、地震や津波などの災害を怪獣に見立てた異色の特撮映画「大災獣ニゲロン」を製作して注目を浴びる。また、ラジオ関西のディレクターとしてレギュラー番組を5本持ち、ジャズのレーベルを立ち上げるなど、多彩な分野で活躍している。