Tシャツで地域貢献!“堀江魂 Tシャツバル”の仕掛け人に聞く
近年、日本のいたるところで「街バル」が盛んです。街バルとは、チケット制の飲み歩き・食べ歩きイベントのこと。最近では、飲食店にとどまらず、クイックマッサージ、ヘッドスパ、各種体験レッスンといった多彩なお店が参加し、地域の活性化にもつながっています。
そんな中、“オリジナルのアートTシャツを着て街バルに繰り出す”という斬新なアイデアで話題を呼んだのが、2016年7月1日~3日に開催された「堀江魂Tシャツバル」です。
「街バル」に「オリT」を組み合わせた理由とは……。このイベントを主催した「堀江の会」会長、梅田りささんに直撃しました。
おしゃれなアートTシャツは、地元にゆかりある有名アーティストがデザイン
―― 「堀江魂Tシャツバル」は、お揃いのTシャツを着て街バルに繰り出そうというアイデアがユニークですが、実施にいたった経緯を教えてください。
これまで堀江では「街バル」を4回実施していて、5回目となる今回は「イベントの記念になるモノを何か残したい」と思ったのがきっかけでした。お店と参加者、そして、参加者同士もつなげることができるものになればと考えたのがオリジナルTシャツだったのです。
―― 5種類のオリジナルTシャツは、どれも堀江の街らしくおしゃれですね。
ありがとうございます。さまざまなイベントで、そのイベント独自のオリジナルTシャツが用意されますが、当日しか着られないものが多く、捨てられてしまうのがほとんど。それを残念に思っていたので、街バルが終わった後も着てもらえるように「アートTシャツ」にしました。さらに、選ぶ楽しさも味わっていただきたくて、1種類ではなく、地元にゆかりのある5人のアーティストにお願いしました。
―― どれも素敵なアートTシャツですが、どんなアーティストが参加してくれたのですか?
独特な目を持つアグレッシブなイラストが有名で広告や音楽業界、伝統芸能までカテゴリーを超えたアートディレクションに挑戦する上田バロンさん、アメ村を拠点に国内外のライブペインティングや病院の壁画制作など幅広く手掛ける黒田征太郎さん、有名ヘアーメイクアップアーティストながらユニクロTシャツなどのイラストでも数々の賞を受賞するKoyo Hasegawaさん、平面や立体、ポエム、インスタなどさまざまな手法で女性の心世界の表現するsilsilさん、鮮やかな色彩と気持ちが上がるポップなデザインで魅了しウォールペイントやライブペイントなども精力的に行うBOXER JUNTAROさんの5人です。
テーマは「堀江魂」。人魚が持つハートから火が噴いていたり、アーティストから見た堀江女子だったり、個性豊かなラインナップになりました。
目標を超える1200枚のTシャツが売れ、街バルは例年以上の賑わいを見せる
―― これらのオリジナルTシャツは何枚くらい売れたのですか?
オリジナルTシャツにバルチケット2枚、MAP入りの冊子付きで3,000円の価格で、バル開催の1か月半前から販売しました。当日、Tシャツを着て街バルに参加してくれた人には、前売券と同額の500円でサービスを受けられる特典を付けて(当日券は600円)。
すると、当初の売り上げ目標であった1,000枚を上回る1,200枚が売れ、街バル当日には完売して手に入らなかったほどの人気ぶりでした。売り上げが予想以上に伸びたおかげで、余剰金で堀江の公園に防犯カメラを3台設置でき、地元に還元もできました。
―― 1,200枚はすごいですね。また、聞いて驚きのお得な価格ですが、アーティストの方々も協力的だったのでしょうか?
本当に有名なアーティストの方ばかりですので、最初は恐る恐るお声がけしましたが、「おもしろい!」「地元のために」と快く引き受けてくださり、楽しみながらイラストを描いてもらったように思います。また、街バルを通して、地元の人に自分の名前や作品を知ってもらえたり、実際にTシャツを着ている人を見かけたりしたことが彼らとしても嬉しかったそうです。
―― 参加されたアーティストの方々は、デザインだけでなく、心意気もすばらしいですね。一方、Tシャツを買った参加者の反響はいかがでしたか?
1枚は着用、1枚は保存用にと2枚買われる人や、バル開催前からTシャツを着用して街を歩いている人もいましたね。バルに参加した店舗以外にも、事務局でネット販売したのですが、東京はもちろん、九州、仙台、台湾などの海外からも注文があって驚きました。
街バル開催中の3日間は、Tシャツを着た人でいっぱいでした。Tシャツを着ている人同士で気持ちが共有できたようで、いつも以上に盛り上がりましたね。オープニングパーティでも、サイン付きのプレミアム感のあるTシャツを当日販売したせいか、例年にも増して多くの人が参加してくれました。個人的には、お揃いのTシャツを着ている家族がかわいかったです。
バル開催後も、ヴィンテージ風にアレンジしたり、襟まわりを広げてチャームを付けたり、カッコ良くリメイクして愛用している人もいますよ。
―― ちなみに、街バルに参加したお店側の反応はいかがでしたか?
Tシャツとセットにすることで前売券を多く発売できたので、例年以上の売り上げとなりましたし、ひと目で街バルの参加者とわかることから「声をかけやすくお客さんとの距離も縮まった」と好評を得ました。
同じアイテムを身に付けることで、街バルはさらに盛り上がる
―― オリジナルのアートTシャツを活用し大盛況で幕を閉じた「堀江魂Tシャツバル」ですが、ずばり成功の秘訣は何だったと思いますか?
一番はアートTシャツにこだわったことでしょうか。街バル開催後も愛用できるようなデザインが、集客の力になったことは間違いありません。
ただ、そこまでデザインにこだわれなくても、参加者全員で同じものを身に着ければ、気持ちを共有しやすく、団結感が生まれると思います。「堀江魂Tシャツバル」ではTシャツでしたが、リストバンドや帽子など身に着けるものなら同じ効果があるのではないでしょうか。
―― 最後に、「堀江魂Tシャツバル」の経験と実績を活かして、今後どんなバル開催を考えていますか?
大阪城で実施しているイベント「サンタラン」とコラボし、今年の12月に「サンタバル」を開催予定です。サンタの衣装付きバルチケットを販売し、サンタラン当日はサンタの姿のまま大阪の「街バル」を楽しんでもらい、クリスマス前にはサンタのコスチュームを着て入院している子どもたちにおもちゃを渡す、というものです。バルはアメホリエリア(アメ村および堀江のエリア)以外にも、裏難波、東心斎橋、梅北、船場の飲食店を中心に400店以上が参加する予定なので、楽しみにしていてくださいね。
参加者・お店・街が喜ぶ“三方良し”の精神が街バルを成功に導く
梅田さんの言葉には、街バルの主催者はもちろん、街や学校などでイベントを企画している人にとって、役立つヒントが目白押しだったのではないでしょうか。参加者も、お店・アーティストも、街も喜ぶ“三方良し”の精神が「堀江魂Tシャツバル」を成功に導いたのでしょう。
12月開催予定の「サンタバル」も楽しみですね。せわしない12月の大阪の街を、温かさと幸せで包んでくれそうです。
Interviewer&Writer:児島奈美
【取材協力】梅田りささん
堀江の会 会長
神戸市出身。1995年の阪神・淡路大震災で被災し、大阪・堀江へ移住。1997年に「レストランバー コベントガーデン」をオープン。「アメホリ」の名で親しまれる堀江とアメリカ村の発展に力を注ぎ、堀江の商業者と住民が共存し新しい街を創造する「堀江の会」を2014年に中心人物として立ち上げ、初代会長を務める。■HP:http://horiestyle.jp/