ベルリン在住の日本人アーティストに聞いた! グラフィカルなTシャツデザインを作るコツ

ベルリンに移住を決めた理由は?

おしゃれなストールづかいでTシャツを着こなす写真の女性は、守屋亜衣さん。昨年からベルリンへ拠点を移した、岡山県出身のアーティストです。

 

ドイツとの縁ができたのは、2010年頃。ケルンのアートフェアコンペに応募し、展示作家に選ばれたことで現地エージェントと縁ができ、さまざまな都市で作品展示を行うように。しかし、そのたびに渡航したり、作品を国際輸送したりするのは制限も多く、「もっと自由に参加したい」という思いから移住を考え始めます。

 

「不安やしがらみもゼロではなかった」けれども、旦那様と1年間、入念に検討を重ねた結果、「経験値は何に生きるかわからない。今ある人脈がなくなるわけではないし、むしろ広がっていくはず!」と移住を決意。現在は多様な国籍の人が集うベルリンで、想像していた以上に刺激の多い充実した日々を送っています。

ここがスゴイ! ドイツのデザインやアート

旧東ドイツ時代のテレビ塔がひょっこり顔を覗かせる。新旧の文化がミックスする、ベルリンらしい景観。

 

政治と文化の町・ベルリン。現地の建造物やインテリア・家電・ピクトグラムなど種々のデザインを見ていて亜衣さんが最も感心しているのは、「余計な情報がほとんどないこと」。共通言語を持たない多様な人種が暮らせるよう、“デザインの力”が街のあちこちで発揮されているのを感じると語ります。

ベルリンにて現在開催中の亜衣さんの個展の様子。

 

アートも同様で、ドイツでは「余計な装飾をなくし、少ない情報量でどこまでアートをやれるか」を追求している作品を見かけることが多いとか。亜衣さん自身も元々ミニマル(=最小限)なデザインに強く惹かれていたアーティストですが、ベルリンに暮らすようになってからは、さらに「余計なものを出来る限り入れないように、もっともっと削ぎ落としていきたい」という思いが強くなったそう。

ドイツ人に学ぶ! オシャレなTシャツデザインと着こなし方

ドイツで購入した中で、亜衣さんが一番気に入っているというTシャツ。ライプツィヒ在住の作家Squizzy-Pによるイラスト・デザイン。

 

ファッション面でも、それは同じ。Tシャツも大人気で、“カジュアルシック”や“エレガントスポーティー”なスタイルにまとめている方をよく見かけるとのこと。

 

「おしゃれな人ほどシンプルなTシャツを着こなしている印象です」

 

デザインの情報量も極端に少なく、プリントの色数も1〜2色程度。生地は「白」が一番多く、次いで「黒」「グレー」。それ以外で見かけるのは、落ち着いた紫や青・くすんだイエロー程度で、派手な色のTシャツを着ている人はあまり見かけないそう。

 

「Tシャツだけを見ていても、“シンプルでミニマルなもの好き”なドイツの国民性を感じますね」

ベルリン・クロイツベルク地区の蚤の市にて。女性もTシャツを着ている人がいっぱい!

 

もうひとつ感じるのは、体型に対する意識の違い。日本では“着痩せする服”が人気だけれど、ドイツには体型を隠すような服は少ない。痩せている人もそうでない人も、さらっとTシャツを着こなしている。他人の体型をあれこれ言うような無粋な人もいないし、美の基準が広い。理想はあっても、画一化されていない―そんな印象。

 

男女問わず人気があるのは“自分に自信を持っている人”で、そういう人は洋服もカッコよく、おしゃれに見える。

 

「『ありのままの自分を認めていること』も、オシャレに着こなすコツなんだなあ、と気づきました」

おしゃれでグラフィカルなTシャツを作るコツ

日本にいた頃はバンド活動もしていた亜衣さん。オリジナルTシャツを作って販売した経験もあるそうですが、いま手がけるならば、やはり「シンプルで、ミニマルな雰囲気のものを作ってみたい!」とのこと。グラフィカルなデザインTシャツを作る際のコツを、プロならではの観点から伝授してもらいました。

 

<デザインについて>

「手持ちのデザインを、真ん中にドーンとプリントするだけではちょっと面白くないかも。シンプルに見えつつも、気の利いた感じにも仕上げたい。そのために重要なのは、情報量のバランス一例ですが、そのデザインがどんなに気に入っていても、あえて胸もとに小さくワンポイント程度にしておく。そのほうが着回しも効くし、よく見るとおしゃれ感もあって愛着湧く一枚になるのでは?」

 

<生地について>

「好みにもよりますが、生地は薄めのもののほうが汎用性は高いと思います。落ち感が出るし、テロっとした柔らかいものの方が重ね着もしやすく、上から何か羽織るときにも使いやすいはず!」

 

<Tシャツ本体の形について>

「首元や袖のリブの部分は“細め”をチョイスすると、スポーティーになりすぎず、街でも使いしやすいと思います。女性なら、首もとは少し大きめに開いているものがおすすめ。アクセサリーやスカーフなど小物と合わせることで、カジュアルにもシックにも、全体の印象を変えて着こなしを楽しめると思います」

 

ベルリンでは、シンプルなTシャツをかっこよく着こなしている人をよく見かけます。

移住希望者や日本のアーティストへメッセージ

現在、グラフィックデザイナー・画家・金継ぎ作家(壊れた陶磁器を修復する日本の技術)という3つの創作を主軸に活動中の亜衣さん。今後も色々な街で積極的に展示も行っていきつつ、色々な人や案件に役立てるデザイナーになっていきたいとのこと。

「どこに住んでいても、とにかく手と頭と足をめいっぱい動かして作り続けていきたいです」と今後の抱負を語ってくれました。

亜衣さん夫妻と個展会場のマネージャー、Claudiaさん。

 

アートをアートとして楽しみ、「◯◯人だからどう」という見方をしない人々のフラットな意識にも、よく感銘を受けるそうです。

 

最後に、亜衣さんのような若いアーティストや海外移住希望者へのメッセージもお願いしてみました。

 

「環境を変えて違うところで思いきり活躍してみたい、活動してみたい気持ちがあるなら、ぜひフラットに考えて行動してみると良いと思います。ネットで情報収集も簡単にできる時代ですし、あまり怖がることはないように思います。今の生活を壊す怖さもあるかもしれませんが、やったらやっただけの何かをきっと得られるはず。特に、ビザの心配が要らない31歳未満の方には、『若者よワーホリを取れ!』と伝えたいですね(笑)」

 

人としてもアーティストとしても豊かな価値観を吸収し、充実感いっぱいの笑顔を見せてくれた亜衣さん。彼女のように“シンプルでミニマルなデザイン”を追求していくと、ヨーロッパの風を感じるおしゃれなオリジナルTシャツができちゃうかも。皆さんもオリジナルTシャツ製作の際には、ぜひ参考にしてみてくださいね。

 

 

Interview & Writing :外山ゆひら

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守屋亜衣

Fine art / Graphic design / Kintsugi 金継ぎ

岡山県生まれ。絵画とグラフィックデザインを神戸で学び、東京でグラフィックデザイナーとして活動。2016年に金継ぎ技術を習得。2017年より拠点をベルリンに移す。