お店が愛されたら自然にグッズは売れるーー『THE DERBY』のオリジナルTシャツがセレクトショップに置かれるまで

新宿には珍しいデザインサロン「THE DERBY」のオーナー・荻堂譲二さん。
荻堂さんは美容師として忙しく働く傍ら、オリジナルグッズの販売をしたり、ご自分のファッションブランド「RULE」を展開したりするなど、幅広い活動をしています。
特にオリジナルTシャツは、セレクトショップに置かれるほど人気のアイテム

 

今回は、Tシャツの誕生秘話やこだわりポイントについてお聞きしました。

 

美容師として働きながらデザインを2年勉強!そして誕生した『RULE』

 

 

――美容師をしながらデザインの仕事をするようになったきっかけは、何だったのでしょうか?

 

荻堂:セレクトショップの方のお誘いがきっかけでした。僕は『THE DERBY』を出店する前、セレクトショップのルックブックなど、ファッション関係のヘアメイクに携わらせてもらうことが多かったんです。そのとき、セレクトショップの方に「何か一緒にやらない?」と声をかけていただいて。

そこで最初はバイイング(買い付け)を担当することに。そのバイイングで結果が出てきたら、「次はデザインをやってみないか」という話になって。でも、当時はデザインの知識がなかったので、デザインの勉強を2年くらいしました。その後やっと立ち上げたのが、ファッションブランド『RULE』です。

 

 

――『RULE』のコンセプトはすぐに決まりましたか?

 

荻堂:そうですね、元々ファッションが好きで、しかも買い物好きなので、「こういうものを作りたい」という方向性はけっこう明確にあったんです。『RULE』のコンセプトは、「男女兼用で着られるもの」。これは僕が女性服のデザインと、メンズライクなものを女性らしく着ている人が好きっていうのが理由のひとつ。

 

――『RULE』以外にもデザインを担当しているものはありますか?

 

荻堂:あと、先日渋谷にある住田美容専門学校の制服をデザインさせていただき、今年の4月から全校生徒が着用しています。『THE DERBY』のアイテムやヘアメイクの仕事とファッションをつなげた『RULE』のアクションを見た学園長からオファーをいただき実現しました。

 

 

新宿にこんな面白い店があることを知ってもらいたくて。そんな思いで作ったオリジナルTシャツ

 

――『THE DERBY』を立ち上げたときからオリジナルTシャツを作ろうと決めていたそうですが、なぜでしょうか?

 

荻堂:よく古着屋で、昔のハンバーガーショップとかガソリンスタンドのお店のオリジナルTシャツを売ってるじゃないですか。あんな感じで、「お店がなくなっても、形として残るものになったら嬉しいな」と思ったんです。他にもライターやボールペンなど、好きなものを好きなメーカーと作るところからスタートしています。
独立前から「自分のお店は新宿で始めよう」と決めていて。この活動で「新宿にこんな面白いお店があるんだ!」ということを知ってもらいたかったんです。

 

特徴がないのが特徴。ユニフォームっぽさがうけて販路が拡大!

 

――オリジナルTシャツのデザインはどのように決めましたか?

 

荻堂:意識したのはファッション性ではなくて、スーベニア(おみやげ)感。たとえばサッカーを見に行ったら、チームのTシャツを着たりするじゃないですか。そんな感じのTシャツにしたかったんです。

 

――ロゴデザインはどなたがされましたか

 

荻堂:お店を出すときに『ENDS and MEANS』のデザイナーさんに依頼して、2種類のロゴを作ってもらいました。ひとつめは看板などに使う筆記体のロゴ。もうひとつは「Tシャツに入れるかもしれないです」と、あらかじめ伝えたうえで作ってもらったロゴです。

 

――そもそもTシャツを作るためにロゴを作ってもらったんですね!でも、ロゴのみのTシャツにした理由は?

 

荻堂ロゴだけなら主張も控えめですし、好きで通っているお店のシャツとして着やすいと思ったからです。『THE DERBY』って、一見美容室だとわからない店名だと個人的に思っていて。

「広告ではなくて、ただ文字が入ってるな」くらいの主張に抑えて、さりげなく着てもらえるものにしたかったんですよね。主張がないデザインだったからこそ色んなところで着てくれる人が増えて、今ではうちのTシャツを置いてくれるセレクトショップも増えました。デザインはそのまま、毎年色をかえて作っています。

 

――ボディを変えたこともないんですか?

 

荻堂:そうですね、ずっと変えてません。きれいな長方形で、女性からすると“すごく首がつまってる”みたいなデザイン。今でこそこういう形も流行っていますけど、その当時はあまり着たいものじゃなかったかもしれません。実際に『Vネックない?』とかよく聞かれましたし。だけど、このユニフォームっぽいデザインだからこそ、すごく無機質な感じでうけたのかなぁと。特徴がないのが特徴のTシャツです。

 

お店が愛されればグッズは自然と売れていく

――販路が広がっているんですね。オリジナルTシャツの販路拡大を考えている人にアドバイスはありますか?

 

荻堂:「売りたい」という部分が強くても、うまくいかないかも……ということでしょうか。
オリジナルグッズって、要は、そのお店が好きだから買ってもらえるところがあると思うんですよね。今の僕は美容師としてのベースがあるんで、「オリジナルTシャツを頑張って売ろう!」という気持ちがあんまり出ないんです。サロンを頑張ってやった結果、お店のことを好きになってもらえて、それでTシャツが売れていけばいいなと。だからTシャツの営業に行ったことはありません。それでも売れ残ったことがないのは、それが受け入れられていることなのかな、と思っています。

 

――今後も同じTシャツを作り続けたいというお気持ちですか?

 

荻堂:そうですね。色は変えてもデザインは変えずに、定番アイテムとして作り続けていきたいです。去年フジロックに参加したときにうちのTシャツを着ている人がいてすごく感動して思わず声をかけたんですけど(笑)。この店がなくなっても愛されるアイテムであったら嬉しいなと思います。

 

美容師の仕事もデザイナーの仕事もオリジナルTシャツを作るのも、トータルで自分の仕事だと語る荻堂さん。
大好きなことすべてに力を注ぐ荻堂さんからは前向きで充実したエネルギーがあふれていて、それがTシャツを通して人に伝わるのかもしれません。

 

 

取材・文:上野郁美
撮影:清水ちえみ

 

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【取材協力】 荻堂譲二さん

『THE DERBY』オーナー、ファッションブランド『RULE』デザイナー。
都内有名サロンで腕を磨いたのち、『THE DERBY』をオープン。
セレクトショップのルックブックなどのヘアメイクも数多く手がける。