風景画をオリジナルTシャツに!? 海外でも人気の「漫画イラストレーター」に聞く「イラスト界を泳ぐコツ」&「Tシャツデザインのコツ」

絵を描くのが好きでたまらない!でもそれを生業にするのは簡単ではない―。

漫画イラストレーター・つちもちしんじさんも、そんな“アートと歩む道”を模索し続けてきたひとりです。

紆余曲折を経て自分らしいスタイルを見つけ、国内外に着実にファンを増やしているつちもちさんに、これまでの半生と作品のこだわりについてたっぷり伺いました!

漫画イラストレーター・つちもちしんじさんってこんな人!

 

つちもちさんが多くの人に注目され始めたきっかけは、Webサイト「おとなの週末.com」に掲載されていた「下町百景」の連載。2016年、それらをまとめた「東京下町百景」を発表したところ、国内外から反響が届くようになりました。現在ではスペイン語版が出版され、ブラジルやフランスでも出版企画の話が進むなど、海外でも目覚ましい活躍をされています。

 

つちもちさんのイラストの多くは、浮世絵や日本画の影響も感じさせる風景のなかに、漫画タッチのキャラクターが物言いたげにそっと佇んでいます。ノスタルジックでレトロで、でもどこかフューチャリスティックでもあるその独特の世界観は、どのように構築されてきたのでしょうか。

(2016年発表「東京下町百景」より)

たくさん挫折したからこそ、自分らしい作風とライフスタイルにたどり着いた

 

つちもちさんが本格的にこの業界を志したのは、実は四年制大学を出た後。多摩美術大学の夜間部に再入学し、日本画を学びながら、TVアニメの美術背景制作にも携わっていたとか。さらに本の挿絵などの汎用イラストも大量に描き、様々な出版社にイラストの売り込みをする一方で、自分の絵が持つ個性にも悩まされたそうです。

 

つちもちさんの作品にはご自身曰く「漫画に影響されたテイストが入っている」そうです。が、賞を取るような人気イラストレーターたちのイラストには、そうした要素は一切ない。そのような背景もあり、「イラスト界に入りたい」と必死になっていたものの、32歳になる頃、仕事で絵を描くのが辛くなってしまったそうで。それと同時に年齢的にも肩の力が抜けてきて、「好きなものを描いて、長くやれたら」と考えるようになり、“サラリーマン絵描き”としてやっていく決意をされたとのこと。

(毎日帰宅してから、コツコツと描き続けています)

 

「イラストレーター」ではなく、「漫画イラストレーター」というユニークな肩書を作ったのもこの頃。弱点だと思っていた自分の個性を受け入れた結果、それが他にはない強みとなり、輝き始めます。

 

20代の頃、あちこちで地雷を踏みまくって、挫折しまくって、残っていたのがこの場所だった…という感じです(笑)」

 

と自己分析されていましたが、好きなイラストを伸び伸びと描いて、コンスタントにSNSで発表する。その作業を繰り返していたところ、「イラストで生活したい」と躍起になっていた頃よりも、注目を集めるようになっていったと語ります。

(元フジテレビアナウンサー福井謙二さんがMCを務める文化放送のラジオ番組「グッモニ」にもゲスト出演)

 

絵の道を志す若い人たちへのメッセージもお願いしてみると、こんなアツイ言葉が。

 

「辞めないことが一番大事。ちょっと傷ついただけで辞めてしまうのは、すごく勿体ないので。厳しい評価をもらっても、そのうち抗体もできてくるし、僕なんかの場合は、リスクを取らなくなってからのほうがうまくいった。小規模でもいいから辞めないでいれば、必ずなんらかのオファーがやってくる時期が来ると思います」

街は日々変わる。「今しかない景色」を切り取って描きたい

 

つちもちさんの絵には不変のコンセプトが込められています。それは、「日本の文化を世界に発信したい」ということ。

 

「日本画の魅力を見出すのは海外の人であることも少なくないけれど、自分は小説家・永井荷風のように、日本で生まれ育ち、日々暮らす中で感じる“小さな消失感”や“大事にしたいもの”を発信したい」

そんな思いを長らく抱いていたそうです。

 

見慣れた街のよさを見出すのはなかなか難しいのでは?と尋ねてみたところ、こんな答えが返ってきました。

 

「天候や四季、自分の気分でも景色の見え方は結構違うんです。そのちょっとした変化を見つけるのが好きなんですよね。同じところをぐるぐると回って探す“ローラー作戦”というか(笑)。それに街の景色も、ずっと同じじゃない。昨日今日でどんどん変わっていきますから」

 

1964年のオリンピック前に東京の景色がガラリと変わったという話を聞くにつれ、今回も同じ変化が起こっていると実感する。今のうちにできるだけ残しておきたい、そんなモチベーションも感じているそうです。

風景絵をかっこよくデザインにするコツは?Tシャツデザイン時のこだわりは?

(つちもちさんが手がけたバンドTシャツ。風景絵が入っている白Tシャツに注目!)

 

実はつちもちさんは、バンドTシャツのデザインを手がけたこともあるそうです。彼らしい漫画テイストのロゴTもありますが、気になるのは真骨頂である“風景絵”のTシャツ。でも、風景絵をTシャツにするのは、思いのほか難しかったのだとか。

 

「Tシャツには画用紙のように枠がないので、いつもの正方形の絵を貼り付けただけでは、自分の絵の場合はですが、かっこよくハマらなかったんです」

 

試行錯誤した結果、あえて四隅に絵を納めない手法をチョイス。四隅の輪郭が直線ではなく、ビルが飛び出していたり、木や遊具の形が輪郭になっていたり……背景と絵の境界線をあえて曖昧にしたそうです。

 

「Tシャツは背景下地があってのデザインなので、そこに乗っかることを意識して。元々そこにある空間を生かそう、という狙いでデザインしました」

 

(あえて隙間を各所に作る。下地の“空間”を生かしたデザインに)

 

製作後の感想を尋ねたところ

 

「既製品じゃないオリジナルTシャツを着られる喜びってやっぱりあるなと。LINEスタンプみたいに仲間で盛り上がるアイコンにもなるし、バンドTシャツもある意味、そういう旗印のような気がします」

 

と意義を感じられているようでした。

 

 

日本文化に興味を持ってくれる海外の人たちはますます増加しています。その上、ネットを通じてボーダーレスに拡散できる時代。つちもちさんのように、日本画や漫画など“日本文化”を感じられる絵やデザインを積極的に採り入れて、海外の人にもクール!と人気が出ちゃう、そんなオリジナルTシャツを作ってみてはいかがでしょうか?

 

Interview & Writing :外山ゆひら

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[取材協力] つちもちしんじさん

漫画イラストレーター

古典的マンガ、浮世絵、絵画、ポップアート、ポップソングなどから刺激を受けて、漫画やイラストに勤しむ。歌川広重の「名所江戸百景」をモチーフに、東京に今なお残る下町の風景を切り取った「下町百景」シリーズで国内外から大きな反響を集め、2016年に完成した百景を作品集として発売。世界各地にファンを広げている。