乾杯するサラリーマンたち

改めて注目される「社内行事」が企業にもたらすメリットとは

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かつて、高度経済成長期には盛んに行われていた社員旅行や社内運動会などの「社内行事」。その後に訪れた不景気による企業側のコストカットの影響や、働く人のプライベートを重んじる風潮が主流となったことで、社内行事を実施する企業の数は徐々に少なくなっていきました。

 

ところが、近年、社内行事を積極的に取り入れる企業が増加傾向にあるのです。少し前までは、特に若い社員に敬遠されていた「飲み会」を催す企業も増えています。株式会社労政時報のWEBアンケートによると、何らかの懇親イベントを実施している企業が約7割にも上りました。

 

社内行事アンケートのグラフ

出典:WEB労政時報

 

どうして、社内行事は再びクローズアップされるようになってきたのでしょうか?

社内行事はコミュニケーション不足を解消するための“切り札”

仕事をする様子

IT技術の進化や雇用形態の多様化などで働き方は様変わりしました。わざわざ時間と場所を合わせて相手と面と向かわずとも、仕事に支障のない状況になったわけですが、それに伴い「以前に比べて顔を合わせたコミュニケーションが減っている」といわれています。

 

「出社早々、挨拶もそこそこにパソコンに向かって黙々と仕事を始める」「連絡や相談もメールで行う」といったことでは互いのことを理解しにくいですし、上司も部下のコンディションをきちんと把握することは難しいでしょう。それぞれの仕事ぶりや人となりが見えにくくなれば、社内のチームワークは悪化しかねません。

 

こういった社内のコミュニケーション不足を解消するための“切り札”として見直されてきているのが「社内行事」なのです。

社内行事を上手に活用している企業の3つの共通点

コミュニケーションをとる社員たち

企業が社内行事に再び取り組み始めた理由は、社員同士のコミュニケーションを円滑にし、社内の一体感を高めることに効果があるためです。

 

なお、運動会にしろ、飲み会にしろ、社内行事を上手に活用している企業には、以下の3つの共通点が見られます。

 

1.社員が楽しめる行事を開催している
2.参加を無理強いしない
3.企画・準備段階から多くの社員に参加してもらっている

 

ワークライフバランスが重視されている昨今、「1.社員が楽しめる行事を開催している」と「2.参加を無理強いしない」というのは、社員に圧迫感や負担感を与えないようにするために必要なことでしょう。

 

そして、社内コミュニケーションの活性化のために特に重要なのが「3.企画・準備段階から多くの社員に参加してもらっている」です。普段、あまり顔を合わせることのない社員同士を組み合わせれば互いを知るきっかけにもなりますし、多くの社員が同じ目標に向かって準備をすることで一体感を一気に高めることができるのです。

社員食堂の設置やユニフォームの統一。コミュニケーション不足の解消策

一緒に昼食をとる社員たち

今、運動会や飲み会といった社内行事をはじめ、企業では社内のコミュニケーション不足解消を図るためにさまざまな方法が試みられています。

 

例えば、社員食堂を設け、食事を共にすることで社員同士の会話の機会を創造している企業があります。あの有名な株式会社タニタの「タニタ食堂」では、食堂を整備することで社員の健康管理とコミュニケーション不足の解消、そのうえ自社のアピールまで成し遂げました。

 

また、仕事をする席を固定しない「フリーアドレス制」を採用したり、社内でユニフォームをそろえたり、といった方法を取っている企業もあります。大阪市内のある美容室では、美容師さんの仕事着をオレンジ色に統一。そこで働く美容師さん曰く、「カラーを揃えることで連帯感が生まれた」「インパクトがあるため、覚えてもらいやすくなった」といったメリットがあるようです。

 

「ユニフォームを統一する」というのは、単なる外見だけのことのようにも思えますが、話を聞いてみると「美容室をみんなで盛り立てていこう」といった意気込みを強く感じることができました。

社内コミュニケーションの活性化は業績アップや離職率低下につながる

コミュニケーションをとりながら仕事を進める社員たち

社内のコミュニケーションが活性化すると、仕事の情報がスムーズに回るようになり、生産性が上がります。生産性が上がれば、業績アップにも好影響をもたらします。

 

加えて、社内での人間関係が良くなれば、社員の企業に対する愛着が高まり、帰属意識が強くなることで離職率が下がることが期待されます。人材確保が難しい近年では、喜ばしいメリットといえるでしょう。

 

ヒトは相手に認められることを求める生き物です。社内のコミュニケーションが活発になることで得られることは決して小さくありません。いきなり社内食堂を設置するのはさすがに難しいかもしれませんが、例えば社内行事であれば比較的すぐに実施できることでしょう。できることから少しずつ始め、社内のコミュニケーション不足を解消していきませんか。

 

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大竹光明

大竹光明

社会保険労務士

関西大学社会学部在籍中に社会保険労務士試験に合格。大手労働保険事務組合、社会保険労務士事務所での勤務を経て、平成18年に独立開業。顧問契約している企業は、大阪府を中心に製造業、建設、卸売り、飲食店など多彩で、社員数1名の中小企業から数万人の社員を抱える東証1部上場企業まで幅広い。労働・社会保険の手続き代行、就業規則作成コンサルティング、人事・賃金制度構築支援、労務管理コンサルティングなどを手がけ、最近では教育研修や人事評価制度の構築支援および運用支援業務に注力している。■HP:http://osaka-otake.com/

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