お揃いのTシャツと袢纏を着た連合会の皆さん

町おこしの旗印はお揃いのTシャツと袢纏。地域と住民をつなぐ

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お江戸日本橋の浜町地区は江戸時代から続く老舗店がそこかしこに並ぶかたわら、マンションや高層ビルも立ち並び、新旧双方の住民が住んでいます。

 

この地区の商店街は、いわゆる「アーケード」などはなく、店舗が町に点在していて散策にはもってこい。浜町の各商店で結成されている「浜町商店街連合会」は、地元の町おこしと、人と人のつながりを大切に活動しています。この連合会の旗印となっているのが、お揃いのTシャツ袢纏です。江戸時代から続く表具店の店主で、連合会執行部の稲崎さんにお話をうかがいました。

浜町の個性にこだわったTシャツデザイン

連合会執行部の稲崎さん

―― 浜町商店街連合会はどのような活動をされているのですか?

 

移動商店街やハロウィンイベント、今回のマルシェなど、年数回のイベントを企画運営したり、近隣の商店街と共催したりしながら活動しています。

 

―― 「移動商店街」とは、どのようなイベントですか?

 

毎年、秋に「中央区観光商業まつり」がありまして、我々はその期間の日曜日の1日を使って浜町公園にテントを張り、各商店の方々に出店してもらっています。また1か月前から、商店街加盟の店舗でスタンプラリーを開催し、その抽選会も公園で行っています。

 

―― このTシャツはいつお作りになったのですか。

 

去年の10月の最終日曜日に、移動商店街と併催で「浜町ハッピーハロウィン2017」を行った際に作りました。浜町ハッピーハロウィン2017は、当日仮装してハロウィンに参加してくれた子どもたち先着250名にお菓子をお配りするイベントで、4年ほど前から開催しています。当日は、多くのお客様で会場がごった返すため、スタッフとすぐ分かるように、という目的でTシャツを作りました。今までは袢纏だけだったんですが、より目立つ方が良いという話になりまして。

オリジナルTシャツ

―― デザインはどなたが?

 

浜町商店街の「高虎」さんという、手ぬぐいなどを作っているお店の職人さんにデザインしていただきました。

 

―― だから、和風で粋な印象なんですね。この胸のマークはどういう意味があるのでしょう。

 

「HAMACHO STOORES(浜町ストアズ)」の「H」と「S」と路地を表現しています。

 

―― 一見するとHとSが隠れていることがわかりませんでした!

 

この町は路地も多く、裏通りにもお店が点在しています。その集合体が浜町商店街連合会なので、そんな町の様子も表現しています。

 

―― 紫色を選んだ理由は?

 

私が選んだんですけど、既存の袢纏とコディネートしやすいからというのが第一の理由です。また、近隣にも商店街や町内会さんがあり、みなさん独自の袢纏やTシャツをお持ちですから「被らない色を」となりました。これから「浜町らしいシンボルカラーを作っていこう」と、この色に。

袢纏の色もTシャツの色も「浜町らしく」。地域の交流に役立っていることを実感

オリジナル袢纏

―― この袢纏は、昔からこの色だったのですか?

 

実は、この袢纏も去年、ハロウィンよりも前に新調したんです。それをきっかけにTシャツも作ろうとなったんです。

 

―― 袢纏のエンジ色にはどのような理由があるんでしょう?もちろん、他と被らないということもあるでしょうが……。

 

エンジ色って個性があると思うんですよ。この浜町は粋な町です。その「粋を出したい」という思いで選び、袢纏の色に合わせてTシャツの色も決めました。

 

―― この袢纏とTシャツの組み合わせ、本当にしっくり来ます!

 

袢纏の襟に「浜町商店街連合会」と漢字で書いてあるので、中に着るTシャツは雰囲気を変えてアルファベットにしました。生地も厚めなものを選び、長く愛用できるようにしています。加盟店は40店舗くらいありますから、ざっと100着くらいは揃えましたね。

 

―― やはり、みなさんで作ったTシャツと袢纏は思い入れが強いのでしょうか?

 

そうですね、やっぱり思い入れはあります。それに、例えば子どもたちがハロウィンのイベントに来てくれたときでも「お揃いのTシャツと袢纏を着ている人たちは、みんな仲間なんだ」と思ってもらえます。そして、Tシャツが印象的なら一緒に顔を覚えてもらえる。そうすると、次に町で会うと「この間はありがとう」と子どもたちが声をかけてくれるんです。Tシャツと袢纏が地域の交流に役立っていることを実感しますね。

江戸の文化と伝統を感じられる粋な町。浜町の魅力をもっと発信したい

オリジナルTシャツと袢纏を着た皆さん

―― さきほど「浜松は粋な町」とおっしゃいましたが、どんなところが粋なのでしょうか?

 

外観は他の町とそんなに変わらないかもしれませんけど、昔は近くに明治座さんがあって、その両脇を黒塀の料亭がずっと並んでいました。僕なんかが小学校のときは、学校帰りに白粉の芸者さんとすれ違うような花街だったんです。今でも当時から住んでいる方が多くいらっしゃいます。

 

―― 江戸からの文化や香りを受け継いでいる方が多いのですね。

 

本来の江戸っ子が多く住んでいる町で、人の気風とか心意気とか、そういうところが粋なんだと思います。ここは「日本橋五の部」という地域で10町会くらいから成り立っていますが、人と人との連携に調和がとれていて融合性がある。それは、みなさんがそういう粋な心を持っているからであって、この町の独特なところだと思いますね。こんなに連携して活動している地域は少ないようで、行政からも「この地域は模範地域です。日本橋五の部さんは行事も大きいし、みなさん連携が取れている」とお褒めのお言葉をいただくほどです。

 

―― 外からはなかなか見えにくい部分ですね。

 

マンションや集合住宅にお住いの方々から「浜町に一度住むと、他には移りたくない」とおっしゃっていただけるのは嬉しいですね。だから、我々も行事やイベントにお誘いしていまして、一度でもご参加いただくとそこから輪が広がって、さらに居心地良く住んでいただけるようです。

 

昔からいる人と、新しく引っ越して来られた若い世代と合わさって、地域で一体になっています。だから、子どもたちも安全に遊べる環境だと思いますし、「こんな東京のど真ん中に、こんな安心な町があったの?」とみなさんに言っていただけます。

 

―― 商店街の活性化だけじゃなく、町全体を一緒に創ろうとされているようですね。

 

住人が自分たちの町に目を向けなければ、町は廃れていくと思います。

 

―― 今後、浜町をどんな町にしていきたいですか?

 

日本橋といえば、高島屋さんや三越さんがある場所というイメージを持たれがちですが、ここも日本橋地域。我々は日本橋の東地区と呼んでいるのですが、この東地区の魅力をもっと外に向けて発信し、より多くの方々にお越しいただけるようにしていきたいですね。

お揃いのTシャツと袢纏には、町をこよなく愛する想いが詰まっていた!

オリジナルTシャツを着た皆さん

生まれも育ちも日本橋浜町の稲崎さんの言葉からは、浜町の町をこよなく愛する想いが伝わってきました。「町をもっと元気にしたい」「人情味あふれる文化を知ってもらいたい」という想いは、Tシャツと袢纏に詰まっています。

 

日本橋浜町、ぜひみなさんも訪れてみてください。きっと、温かい笑顔に出会えることでしょう。

 

Interviewer&Writer:佐藤美の

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稲崎知伸さん

【取材協力】稲崎知伸さん

浜町商店街連合会 執行部渉外担当

江戸時代・天保年間から続く表具店「経新堂 稲崎」の6代目当主。江戸時代、大経師(経師の筆頭格)の称号を得た江戸随一の表具店の跡取りとして浜町に生まれる。日本橋東地区の地域活性化や商店街の活性化などの地元活動に注力。周囲の人たちとともに活動を続けている。■経新堂HP:http://www.kyoushindo.com

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