トップダンサーGUCCHONのダンスとホームタウン寝屋川への想い。子どもたちが音楽に触れて育つ環境を作りたい。
世界の名立たるダンス大会で輝かしい功績を収め、日本のみならず世界中のダンサーからリスペクトされるPOPダンサーGUCCHON。ダンスを始めたきっかけや、地元寝屋川でダンススタジオを経営に至った背景、ダンスシーンに対する想いなど、等身大のGUCCHONが詰まった貴重な長編インタビューです。
ダンスに興味を持ったのは応援団の振り付けを覚えるために借りたダンス甲子園のビデオ
高校3年生の時、体育祭の応援団になって、振り付けを自分たちで考えなきゃいけなくて、その参考になるものをTSUTAYAに探しに行ったら『ダンス甲子園』のビデオがあって借りたところ、それがメチャクチャかっこよくて、なにこれ!と衝撃を受けて、そこから新聞のテレビ欄のダンスって書いてある番組は片っ端からチェックしてましたよ。
最初はただのダンスファンでしたね。RAVE2001、J-DANCEなどのTV番組は欠かさず観てました。
そんな時に、地元のタウン誌に「ストリートダンスを教えます」と電話番号と西くん(現STUDIO MYSTERのオーナー)の名前だけ書かかれた広告を見つけ、電話して行ってみたんですよ。
そこは、ダンススクールというよりも、色んなジャンルのダンサーさんが1つの音楽でそれぞれのダンスをする練習場という感じでした。そこで週1回1つのステップやムーブを教えてもらって、それをひたすら2時間練習するってのが続きました。
4年間毎日ダンスに没頭した大学時代
その練習場で、現在の相方となるKEIくんにも出会いました。そこで練習していたダンサーさんたちは、実は練習が終わってからさらに、駅前で練習をしていて、KEIくんにそこに連れて行ってもらってからは、毎日のように、それこそ365日中360日は練習していました。そんな大学4年間でしたね。
当時はダンスが楽しくてしょうがなかったというより、ダンスが下手くそだと周りからボロカス言われるのが悔しくて、見返してやろうという想いで必死にダンスの練習をしていました。
けど、そこから何かを越えた時に、誰かのためにダンスをやっているのではなく、自分のためにダンスをやっているということに気がついて、これまでは負けたくないという想いでやっていたダンスを、楽しみながらできるようになりました。
例えば、単調な基礎練習を繰り返しているだけでは面白くないので、繰り返す中で「この時こうやったら、もっとこう見えるんちゃうか」などを常に考え、自ら気づくことで楽しみを見つけていった感じです。
このダンスに没頭した大学時代が今の自分の糧になっています。
今は家族もいてスタジオもあるので、もうあんなことは一生できないですね。
もっともっと上手くなりたいし、常にフレッシュでいたい。
自分でレッスンをする立場になって初めて、ちゃんと他人のレッスン受けるようになりました。
それは、教え方の勉強もあるし、自分自身もっともっと上手くなりたいと思ったからですね。
先生でもありながら、プレイヤーであり続けたい、常に吸収したいと思っています。
自分だけでダンスを作り出すのは、ぼほムリだと思うし、誰かしらに影響を受けて、常に気づきがないと上手くならないと思ってます。
ダンスや音楽に対しての好奇心は尽きないですね。
僕は毎年意識してスタイルを変えているわけではなく、生きている限り常に何かに影響を受けるし、常に吸収しているから自然と変わっていきます。現状のスタイルに満足すること無く、毎年フレッシュでありたいと思ってます。
地元の子供たちが音楽やダンスに触れて育つ環境を作りたくて地元寝屋川に「STUDIO SUNNY HOOD」を作った。
生徒たちには、視野を広くもってもらいたいと考えています。
そのために重要なのは、なるべく本物に触れることだと思っています。
本物を見る、触れることによって、子どもたちが受ける刺激や衝撃は全然違うと思いますし。
けど、地元だけにいると本物にふれたり、視野を広げるのが難しいので、せっかく僕が世界のブレーンとつながっているというのもあり、スタジオに世界のトップダンサーを招いてワークショップを開催したり、僕が海外の大会に参加するときは、希望者には同行させたりもします。
そこでダンスはもちろん価値観にもふれて欲しい。
例えば、L.Aで育ったダンサーは、サンサンと照りつける太陽、大きな空、キレイな海、異なる文化で育っていて、間違いなく価値観は違いますよね。ダンスだけではなく、そういう人たちの価値観にも触れてもらい、視野を広げていって欲しい。
視野が広がることによって、自分で行動するようになり、好奇心・自立心が育つと思っています。
STUDIO SUNNY HOOD強化クラスの練習風景。
やる気スイッチがバチッと入るサマーキャンプと、地元の人達にダンスを知ってもらうための地道な活動。
僕のスタジオでは夏に3日間朝から夕方までどっぷりとダンスの練習をするサマーダンスキャンプを開催しています。
これまでは週一回1時間程度しかダンスしてなかった子たちが、3日間どっぷりとダンスをすると、やる気スイッチがバチッと入るんです。
そのキャンプの集大成として、イオンモール四條畷で発表会を行いました。
これをきっかけに子どもたちも大きく成長したし、さらにはイベントを観覧しに来てくれた子たちがダンスに興味を持って、そこから体験レッスンに来てくれて実際にダンスを楽しむ機会が生まれたりもして大成功でした。
その時に、クラスごとに色の異なるオリジナルTシャツを作りました。サマーキャンプに参加した子たちしかもらえない誇りあるTシャツです。こういったオリジナルのチームTシャツをみんなで着ることによって一体感が生まれますよね。
その他、地元の人たちにダンスに触れてもらうための取り組みとして、小学校に教えに行ったり、ショーケースをやらせてもらったりしています。こういった活動がきっかけで、地元のお祭りから声がかかり、子どもたちが人前で発表するいい機会が生まれ、さらには地元の人たちがダンスに触れるきっかけとなり、いい流れが出来てきています。
将来的には街で音楽が流れてそこらへんで人々が踊っているのが当たり前になっている地域になって欲しいなと思っています。
理想は、ダンスを習っているから踊っていいとかではなく、音楽が流れていたら老若男女、みんな体が自然と動いてしまうような街になって欲しいですね。
広がるダンスシーンに対する想い
世界と比べても日本はダンス大国で、確実にダンス人口は増えています。しかし裾野が広がっていくことでカルチャーが薄くなっていくことを懸念してます。薄い状態であることを理解していればいいですが、これが濃いと思ってしまわれたら危ないですよね。
ダンスはHIPHOPカルチャーの一部なんですが、HIPHOPを構成する4エレメンツ※1を知らない子がほとんどなんです。
※1 HIPHOPは、MC(RAP)・DJ・(BREAKE)DANCE・GRAFFITIの4大要素で成り立っているという説。
しかし近年はこの4エレメンツにknowledge(知識)をプラスして5エレメンツにしようという考え方もあります。
なぜヒップホップカルチャーを理解することが重要かというと、例えばダンスイベントは、MC、DJ、フライヤーを作るアーティストがいて成り立っていることに気がつき、そこに感謝の気持ちが生まれます。周りの人たちがいるから、自分たちダンサーが成り立っている、繋がっているから輝けていることを理解して欲しいですね。
カルチャー・歴史を理解しないままでいくと、どんどんと薄っぺらいカルチャーになっていき、ゆくゆくは自分たちの首を締めることになると思っています。
こういったカルチャーを後輩に受け継いでいくことも自分の役目だと思うし、これからもHIPHOPカルチャーを大切にしたスタジオにしていきたいです。
近年のバトルブームも要注意
近年、バトルがメチャ流行っていて、個の技術力の高さが必要になってきていますが、それはそれで問題があると思ってます。
NYブロンクス出身でヒップホップカルチャーの火付け役になったロックステディクルーのメンバーMr.WIGGLESから教えてもらった言葉があって、
ダンサーにとっての重要なカテゴライズ、
1.パーティ
2.サイファー※2
3.ショー※3
4.バトル※4
「パーティー、サイファー、ショーで経験して培ったことを弾に込めてショットするのがバトルだ。」
バトルだけにフォーカスするんではなく最初の3つを大事にし、経験し、自分を磨くからこそ、バトルに面白さがでる。
※2 サイファーとは何人かでサークル(円)を作り、ランダムにダンスをしていく形式のダンスセッション。
※3 ショーとは、チームで事前に練習した振り付けを人前で披露すること、ショーケースとも。
※4 バトルとは、DJが選曲した曲を即興で踊りジャッジが勝敗を決めるダンス競技。
この言葉がとても好きでMr.WIGGLESに許可を貰いオリジナルTシャツまで作りました。
バトルしか経験していない子は、バトルに勝つことしか考えていないのでバラエティに富まず面白く無いですよね。
全てのカテゴライズを大切にし、そういう場所を経験して来ている子はダンスにも面白みがあり、エンターテイメント性、人間性がますます踊りに出て来ると思います。
バトル(1ON1)は個人が踊るので、その人らしいパーソナリティが重要だと思ってます。
地元寝屋川をダンスと音楽で盛り上げることが僕の使命
毎年NDF(寝屋川ダンスフェスティバル)という、世界のトップダンサーを招いて、地元の人達に本物のダンスカルチャーを気軽に触れてもらうお祭りを開催しています。このNDFがあったからこそ、同じ寝屋川のダンススタジオなどともつながることができました。
僕一人の力だけでは絶対にムリだから、みんなを巻き込んでリーダーシップをとって寝屋川の街を盛り上げていきたいですね。
今年は、なるべく海外からの出演オファーは断り、地元に専念するようにしています。
皆、成長するのが本当に早くて、少し見ないうちにドンドンと大きくなっていってしまう。
子供の成長を見届けて、ダンスを好きでい続けて欲しい。
そして大人の人にもダンスを身近に感じて好きでい続けて欲しい。
子供も大人も関係なく生徒と一緒に、僕も一緒に成長させてもらっています。
GUCCHONプロフィール
POPの世界チャンプとして日本をレペゼンし続けている。彼はそこに留まらず常に音楽とのシンクロを追及し、即興性、創作性を大事にしている。独自の感性で「ダンス」として表現するGUCCHON。国内外問わずバトル優勝、ジャッジとしても活躍し、POPバトル、FREESTYLEバトルとジャンルの垣根を飛び越え、すべての人が驚愕する踊りを見せてくれる「本物のダンサー」である。
撮影協力
STUDIO SUNNY HOOD
http://www.sunny-hood.com/
大阪府寝屋川市東香里園町22−25
TEL:072-832-4833